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目からウロコのアニメ・漫画入門を聴講した

友達に誘われて、8/1(金)にNHK文化センター青山教室で開かれた「目からウロコのアニメ・漫画入門」に参加してみた。講師は岡田斗司夫さん、大阪芸術大で客員教授もされているアニメオタク(であり、ガイナックス設立者)です。

まず、芸術作品や美術作品というのは「技術」がありそれを知っているからこそ「鑑賞」「評価」その発展として「制作」ができるのであって、日本の場合、小さいころにはそういった技術面の教育というのがあまり重視されていないため大人になっても美術館に行ったりしても見方が分からず、結果あまり足を運ぶ人が多くない。今回は、岡田さんが大阪芸術大で基礎的な授業として行っている内容に合わせてアニメの「見方」「(カットの)読み方」を伝えていきたい、というところから入る。のだが、有料の講座だったので内容にはあまり突っ込まないで感想を中心に書こうと思う。

今回、題材として岡田さんがチョイスしたのは宮崎駿監督の「カリオストロの城」オープニング、そして同じく宮崎監督の「On Your Mark(Wikipedia)」(チャゲアスのライブ時に使用するBGVとして制作したジブリ的には”実験映像”)だった。

画面全体に意味を持たせる

アニメの世界では実写世界とは違い画面内のあらゆるものがコントローラブルである。なので、描かれているすべてに意味を持たせることが可能であり宮崎監督は実際に行っている。カリオストロの仕事の際、十分な力を持ったスタッフが揃わず苦しい環境での制作となったが「画に語らせる、画だけで伝える」ということを行い、成し遂げられたことは本当にプロのなせる業だなと感じた。しかも、この仕事は好んで取り組んだものではなかったということがさらに驚かされる。
近年ではメインに声優を起用しないということで物議を醸した出来事も多い監督の作品だけれども、この「画に語らせる、画だけで伝える」ということが徹底され完成されたレベルだからこそ、声の演技は敢えて不要であり寧ろ邪魔になるということを意思表示しているのだろうと思う。つまり、これは誰でもできるということではなく宮崎監督だからできることなんだろうな。

宮崎監督の「悪意」

もうひとつ題材とされたOn Your Markは、逆に宮崎監督が「悪意」をふんだんに盛り込んだ作品として紹介された。作品の概要としては、原子力発電所の事故により荒廃してしまった世界でチャゲアス扮する警官が羽の生えた女の子を救出する、という単純に見るとそういう流れになっている。当時日本では福島のような原発事故はなく直近ではチェルノブイリでの事故があったが、福島での事故があったとき、この作品が話題になったことがあったような気がする(よく覚えていない)。
それで、何が「悪意」なのかというと。冒頭のシーンには人気のない村が描かれているが、そこにradiation hazard signの入った標識と石棺らしき建造物が見える。これだけで、放射能が強い地域であり人が住めない所であるという設定を表している。公開された1995年当時、どれだけの人がこのシーンで意味するところが理解できるかは未知数だっただろう、今では悲しいかな大半の人が理解できてしまうのだが。そういった具合に、「オレはちゃんと描いてるよ、ちゃんと読み取れよな」というところが先のカリオストロをはじめとした子ども向けの作品とは大きくスタンスが異なっている。またこのアニメは受け手の解釈に左右されることも特徴的である。繰り返しになるが、「画に語らせる」という能力が十分に備わっているのに、である。しかも、背景をちゃんと読み切れている人ほど、バッドエンドになる様に組まれている。まあ、それがOn Your Markの歌の意味に重ねるとたどり着くこともできるものであったとしても。
悪意と言えば悪いことを指すものだったり、最近話題になったような故意であるかどうかといったりするものを想像しがちだ。加えてそういった表現も「悪意」という括りになるんだな、と自分の仕事で思い返してみると、Webだったりアプリの画面を設計したりしているときに「悪意」が入り込んでいるのではないかと考えさせられた。

講座の内容はそのような話をワンシーンワンカットのレベルで宮崎監督の人柄も交えて解説をしていただくという、本当に「読み方」に近いものだった。岡田さん曰く「これを風立ちぬでやりたい」「全部のロボットアニメのオープニングでやりたい」ということでしたが流石に風立ちぬは…。いやでもこれは面白そうな香りしかしない。