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2006年11月14日

ncRNAが知能の素?  このエントリーを含むはてなブックマーク 

知能の設計図はDNAの蛋白をコードしない領域にある(ref. 最尤日記)
仕事中に見つけた。元論文は↓。

An RNA gene expressed during cortical development evolved rapidly in humans,
Pollard KS, Salama SR, et al., Nature. 2006 Sep 14;443(7108):167-72.


Here we report that the most dramatic of these 'human accelerated regions', HAR1, is part of a novel RNA gene (HAR1F) that is expressed specifically in Cajal-Retzius neurons in the developing human neocortex from 7 to 19 gestational weeks, a crucial period for cortical neuron specification and migration.

とアブストにある通り、ヒトの妊娠7~19週は大脳新皮質が形成される大切な時期で、CR細胞は特別な役割を担っているとされているのですが(それが錐体細胞を引っ張り上げる作用なのか、移動してきた錐体細胞をストップさせる作用なのか、はたまたまったく関係ないのかは分かってないけど)、HAR1Fというヒトとチンパンジーで最も変化しているゲノム配列のうち転写されている配列を調べるとCR細胞に発現しているらしい。

確かに、ヒト特有の発現配列があって、それがヒトをヒトたらしめているという論はあって当然だろうとは思うのですが、果たしてその"進化(変化)"は本当にその現象を引き起こしているのか、という問題が常に付きまとうのではないだろうか…。
ヒト特有、ってことは当然マウスでは発現していないわけだし、当の配列をマウスで発現させたときに『何もありませんでした』では結果何の機能を持っているか分からないし、そうなる可能性のほうが高いと思う。『大脳新皮質が肥大化して構造が複雑化しました』とか(見た覚えがあるけどどの論文か忘れた…beta-catenin?)なら分かりやすいけど、こういうのって発現して機能する遺伝子の仕事だと思うのですよね…個人的には。ncRNAの仕事で大きな影響を及ぼすのとしては、遺伝子発現を抑制するinhibitorとしてかなぁ。もしかしたら、結果的に他の遺伝子の発現を増幅する機能もあるかも知れない。

というか、CR細胞って表層にいてるのは胎生期だけで生まれたあとは行方不明になっちゃうんよね。説によるとサルでは生後でも表層以外の場所に存在してたり、CR細胞の別のマーカーとして使われるanti-Calretininで染めるとマウスでは生後に下層から供給されてたりするわけやけど…少なくともなぜかanti-Reelinで見えない。Reelinが発現してない可能性は大いにあるけども。この辺CR細胞とは何ぞや、というところもはっきりしてない。
それに、非錐体細胞(のうちinterneuronのGABAergic neuron)は、マウスとは異なる移動経路をとることが言われてるし、マウスでは産生されなくなる時期でもヒトでは産生されてるらしいし、実際にチンパンジーではどうなってるか知らないけれども、こういった現象に一様にHAR1Fが影響しているのならそれはそれで面白いけど、やっぱり、層構造の形成には影響ないんじゃないでしょうかねぇ。

けど、HAR1Fが何らかの機能を果たした結果、"ヒト"というものを作り上げているのだとしたら、胎生期に何かしらが決定付けられてることになるんやね…。それが、チンパンジーにはあって、ヒトにないものだとしたら、それは面白いかも。

By ただ at 14:46 カテゴリー ; mein Erbe , 仕事関係

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